TOP > メディア掲載記事 > 日本経済新聞 H22.04.22

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浜松でクラウド構想浮上

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中小・行政の期待高く 推進体制は不明確
コスト負担など課題

浜松市や地元経済界でインターネット経由でソフトウェアやサービスを利用する「クラウドコンピューティング」の環境を整備する構想が浮上した。サービスを提供するデータセンターを市内に建設。企業や行政のIT(情報技術)関連コストを大幅削減、競争力強化につなげる考えだ。自治体クラウドは全国的にまだ珍しいだけに、期待の一方で実現には曲折も予想される。

「浜松版クラウド構想」は3月下旬、静岡経済同友会浜松協議会(代表幹事・岸田勝彦ヤマハ特別顧問)が浜松市内で開いた同友会経済サミットで発表した。構想は浜松市内にデータセンターを建設、行政の基幹システムや企業向けのサービスをクラウドで提供する。

構想をまとめた同友会浜松協議会の晝間日出男政策委員長(浜松ホトニクス顧問)は「クラウドを軸に既存企業とベンチャーを融合、ものづくりを高度化したい」と話す。

IT関連コストが大幅に下がるクラウドは資金力の乏しい中小・ベンチャーに大きなメリットがある。例えば、大手製造業が設計に使う3次元CAD。「中小企業には高くて買えないが、クラウドであれば使える」(アルモニコスの秋山雅弘社長)といい、技術力向上につながる。

地域限定ブログ「はまぞう」を運営するシーポイントの野澤浩樹社長は現状を「浜松はソフト関連の技術者が夢を持って働くことのできない街」と語る。最先端のクラウドやデータセンターの整備で働く場として魅力が高まり、IT関連企業の集積が進めば、地域のにぎわい再生にもなる。

行政も期待する。「浜松市は職員の人事データベースが整備されていない。異動期は紙の台帳をめくって作業しており効率が悪い」。山崎泰啓副市長は3月中旬の同友会浜松協議会の研究会で、職員人事を例にクラウドでIT環境を整備する重要性を訴えた。クラウドを導入した佐賀県では電子申請にかかるコストを80%削減できたという。

観光振興にも活用できる。無料の公衆無線LAN(構内情報通信網)を整備し、場所に問わずインターネットに接続して情報を得ることができる「ユビキタス社会」を構築。観光客はスマートフォン(高性能携帯電話)などで、無線LAN経由で飲食店やイベント情報を得る仕組みだ。

もっとも、今後の推進体制が不明確であるなど、まだ実現への絵図は描かれていない。自治体クラウドは佐賀県などで導入が進むが、全国的に珍しい。「他の自治体に先駆けて浜松市がやる必要があるのか」という議論もある。

データセンターは当初、静岡県内などの既存施設をレンタルして使うとしたが、将来的には自前の施設を建設する予定。建設コストの負担についての議論もこれからだ。鈴木康友市長が同友会経済サミットの際に「デジタル技術はあくまで手段」と強調したように、企業向けサービスや観光案内などコンテンツの充実も不可欠。関係者の熱意と実行力こそが「構想と「実現」の橋渡し役になる。
(浜松支局 伊藤大輔)

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