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名前が消える 個人情報保護法1年

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手形決済情報約8万9千件が流出─。3月上旬、富士宮信用金庫のシステム管理を受託するNECグループの役員らが、信金幹部とともに報道カメラに頭を下げた。

個人情報保護法の施行後も続くおなじみの謝罪風景だが、注目されたのは話題のファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の介在とともに、「情報」が本業の大手企業グループにものぞいた初歩的とも映る管理の穴だった。

システム更新に携わったNECの再委託先社員(23)は、ノーチェックで私的にデータをコピー。ウィニーの危険性は関係者間では既に常識のはずが、同ソフト搭載の自宅パソコンにデータを入力し、暴露ウイルスの感染でネットに流出させた。

データの持ち出し理由は「システムの勉強のため」、データの中身も「(プログラムだけで)顧客の実データは入っていないと思っていた」と同社員。大量の情報は、悪意も認識もないままあっさり流れだし、今もネット上を漂う。

「たとえ私物でも、パソコンの自宅持ち帰りは原則禁止」。愛知、岡山、愛媛と続く県警情報の流出を受け、静岡県警は3月中旬、警察庁の指示を基に公務情報やパソコン管理の再徹底を全職員に命じた。

予算の制約もあり、業務に使われるパソコンの4割は依然、職員の私物。私権の制約ともみえる強い処置だが、「警察情報は高い秘匿性が要求される。公務に使う以上、厳しい持ち出し制限もやむを得ない」と伏見和男情報管理課長の表情は硬い。県警はさらに、私物パソコンの使用者にウィニー不使用の「確認書」を要請。パソコンデータの暗号化も加速させる。

止まらない流出事故。事業者らは細かな情報管理規定を設け、従業員からも漏えい防止の誓約書を取るなど管理と倫理の徹底を進める。しかし、守りきれるのか、担当者らの不安は消えない。

内閣府の調査では、本年度上半期の情報漏えい事例(896件)の役8割で「従業員」が関与、その原因のほとんどは「不注意」だった。

「規則を設け誓約書を取れば、明日にも保護を徹底できると考えるのは間違い」。個人情報の管理体制を第三者認証する「プライバシーマーク」の取得を支援する「シーポイント」(浜松市)の佐野憲さんは、こう指摘し、続ける。「個人情報を大切にすることは、顧客や取引先、自社の従業員やサービスを大切にすること。業務全体の質を上げる作業と同じで、社員教育と目的意識の共有が不可欠。だが、そこがまだ十分理解されていない」。

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