TOP > メディア掲載記事 > 静岡新聞 H24.02.02

メディア掲載記事

クラウドの波 ~県内IT事情(下) 情報技術変わる暮らし

大学が試算した資料には驚異的な数字が並んでいた。「IT投資コスト 97% カット、関連する消費電力 90% カット、排出する二酸化炭素 90% カット」━。これらは静岡大が取り組む「学内クラウド化」による効果だ。

静大は2010年10月、全国の大学で初めて大学の情報システムを外部で運用するクラウド化に成功した。コンピューターの頭脳部分のサーバーはほとんど撤去し、学外の貸しサーバーなどを使って学生の情報や研究成果などを管理する。

「これほど学内のシステムが変わっても、気づかない人がいるほどパソコンの利用環境や性能は全く落ちていない。このことが一番驚くべきことかもしれません。」陣頭指揮を執った静大情報基盤センターの井上春樹教授はこう胸を張る。

身近な暮らしの中にクラウドは徐々に浸透している。

浜松市では、NPOが観光情報のデータベースをクラウド上に構築し、JR浜松駅周辺に情報提供の端末機を設置。県立中央図書館など 129 図書館は昨年、電子化した書籍をクラウドで管理する「電子図書館」の実験を行った。近い将来、図書館の資料を自宅で調べることができるようになるかもしれない。

一方、自治体のクラウド導入の取り組みはまだ始まったばかりだ。県内では昨年 8月、県が音頭を取り「自治体クラウド勉強会」がスタートした。

静岡市のIT推進担当者は「まず住民情報のデータを(市庁舎の)外に出すことに抵抗がある。情報流出の危険性やサイバー攻撃に対するセキュリティーの安全対策も、万全とは言い切れないのでは」と慎重姿勢を崩していない。

広島県大竹市で自治体クラウドを提供することになった IT中堅の日本ユニシス(東京都)。黒川茂社長は「災害に強く、周辺市町で共同利用すればさらにコストが下がる。行政用の専用回線を利用することで安全性も保たれる」と指摘。電気・ガスなどエネルギー管理や電子カルテといった医療部門など公共分野への積極的な活用も提案する。

井上教授は「クラウド自体が新しい社会インフラ。さらなる技術革新とともに、受け入れる側も従来の発想を変えていく必要がある」とみる。

(この連載は静岡新聞経済部・河村雅彦記者が担当しました)

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